20/21シーズンのブンデスリーガを2位で終えたRBライプツィヒ。
「バイエルンに勝てたな」、「2位で充分」、「CL出場権を獲得できれば良し」など様々な“印象”があるだろう。今回はそういったイメージを削ぎ落として、「期待値」の観点からこの結果は妥当なものだったのかを見ていきたいと思う。
期待値とは?
期待値については、近年よく耳にするワードだろう。最もメジャーである「ゴール期待値(Expected Goals/xG)」、そしてそのxGを基にして算出される「勝ち点期待値(Expected Points/xPTS)」について、『サッカーキング』の記事から引用させてもらう。
『ゴール期待値』は「そのシュートが得点につながる確率がどれだけあったか」を示すもので、シュートを打った距離や角度、またシュートの種類(キックかヘディングか)など複数の要素を考慮して、「0~1.0」の値で示される。つまり「1.0」に近いほど得点の確率が高いシュート、ゴールになって然るべきシュートだったというわけだ。
そして90分間で記録したシュートすべての期待値を合算すれば、そのチームが1試合で奪えたはずの得点――『得点期待値』が導き出される。もちろん対戦相手の『得点期待値』も分かるため、どちらのチームがより勝利に相応しいゲームをしたかが数字で可視化されるというわけだ。
これらの考え方を基にして算出されるのが、『勝ち点期待値』である。普段の試合中継でも、「勝てた試合でしたね」や「価値あるドローですね」などのコメントを聞いたことがある方は多いだろう。これらの多くは実況者や解説者が試合内容を感覚的に分析したものに過ぎないが、『勝ち点期待値』は運などの不確定要素を一切排除し、そのチームが本来得るべき勝ち点を統計的に算出したものである。
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このデータから見た今シーズンのブンデスリーガはどのようなものだったのだろうか。
如実に表れた決定力の差
上図は20/21シーズンのブンデスリーガにおいて、「得点期待値(xG)」、「失点期待値(xGA)」、「勝ち点期待値(xPTS)」を実際の数値と比較したものである。
RBライプツィヒのところを見てみると、三項目全てで期待値を下回っている。
特に悲惨なのがxGとの比較。67.14の得点をすべきところを、現実では60点しか取れていない。今シーズンのRBライプツィヒはティモ・ヴェルナーがチェルシーへ移籍し、パトリック・シックの買取りも断念して、その穴埋めに失敗した。結局それが勝ち点の取りこぼしに繋がっているとみられる。xPTSを見ればわかるが、RBライプツィヒはバイエルンの数値を凌駕しており、実のところ優勝すべきチームはRBライプツィヒの方だったのだ。
反対にタイトルを獲得したバイエルンは、xGを23.07も上回る99得点を記録。ゲルト・ミュラー超えの41得点を達成したロベルト・レヴァンドフスキというスーパーストライカーの存在が、RBライプツィヒに足らなかったものを如実に表していると言えるだろう。
ちなみに、今シーズンの得点ランキング上位10名のデータが以下の通り。
やはり、これを見てもレヴァンドフスキの決定力は凄まじいものだとわかる。パトソン・ダカ(RBザルツブルク)と共に、RBライプツィヒのストライカー補強候補に挙がっているサシャ・カライジッチもあくまで今シーズンに関してではあるが、決定力を見せた。
逆に、RBライプツィヒのFW陣は軒並み期待値を下回った。そういった低調なストライカーたちをベンチに置いて、偽9番として起用されることもあったエミル・フォルスベリが唯一FW陣で期待値を上回ったのは皮肉なものである。
もちろん、この期待値というものは完全無欠な考え方ではない。「シュート」が決まる可能性を考慮しているため、例えば数的有利のカウンターでオフェンス側が判断ミスをしてシュートまで至らなかったり、中盤でターンしてマーカーを置き去りにすればビッグチャンスになるところを、カード覚悟のプロフェッショナルファウルで止められた場合などはデータとして算出されないわけだ。実際に、期待値はもう時代遅れであると唱えるアナリストもいる。それを踏まえた上で、今回のデータを見てもらえたらと思う。
スポーツに「たられば」は禁物である。しかし、もし今シーズンのRBライプツィヒが期待値通りに収束するような結果を残していたら、ナーゲルスマンは今頃マイスターシャーレを掲げていて、後ろ指を指されながらバイエルンへ行くこともなかったのかもしれない。
参考資料
1.サッカーの見方が広がるかも…? 『勝ち点期待値』から見るプレミアリーグの順位(サッカーキング)
2.デイリーサッカーニュース Foot! MONDAY 5月24日放送分(J SPORTS)
3.Bundesliga xG Table and Scorers for the 2020/2021 season(Understat)
Foot!でベン・メイブリーさんが期待値で振り返るプレミアリーグをしていたので参考にしました。