昨季RBザルツブルクがクラブ史上初のCLに出場し、RBライプツィヒはベスト4まで進出した。比較的順調に成長を続ける2クラブの裏で、苦しい戦いを強いられているクラブがレッドブル・グループ内にある。
それがレッドブル・ブラガンチーノとニューヨーク・レッドブルズだ。
ブラジルとアメリカを拠点とするこの2クラブが抱える難しさを少しだけ見ていこうと思う。
キーワードは”欧州化”
RBグループの4クラブでピラミッドの頂点にいるのは、やはりRBライプツィヒである。RBザルツブルクからは数え切れないほどの選手がライプツィヒの地に降り立ち、タイラー・アダムスのようにニューヨークから直接吸い上げられる例もある。
そんなRBグループ内にあってヨーロッパ外のRBブラガンチーノとNYレッドブルズに求められるのは、欧州で戦える選手の育成。もっと言えばクラブの”欧州化”だ。これは、昨季までレッドブルのサッカー部門を統括していたラルフ・ラングニックを中心に推し進められていた。
その動きの一つとしてフロントの欧州化がある。
RBブラガンチーノは、今年になってテクニカルディレクターとしてマンチェスター・ユナイテッドやアーセナルで働いた経験のあるサンドロ・オーランデリを招聘。続いてNYレッドブルズも、ウォルバーハンプトンからケヴィン・セルウェルを引き抜いた。
ラングニックは、監督として指揮を執るのであれば、その国の言語を話す必要があるという考えの持ち主。となれば欧州化を目指す上で、監督はRBブラガンチーノでは「ポルトガル化」、NYレッドブルズは「イングランド化」を進めていくことになる。
RBブラガンチーノの苦悩
まずは、RBブラガンチーノについて。
元々RBグループはレッドブル・ブラジルという4部チームを保有していたが、昇格まで時間を要するため方針転換。2部のCAブラガンチーノを買収し、そのシーズンに1部昇格を果たした。
しかし、順風満帆に思われた矢先にイレギュラーな事態が起こる。監督を務めていたアントニオ・カルロス・ザーゴが、鹿島アントラーズの指揮官就任のために突然退任したのだ。
急遽新監督を探すことになったクラブは、ポルトガル人監督招聘を狙う。ブラジルではその頃、ベンフィカなどで長く指揮を執った名伯楽ジョルジェ・ジェズスがフラメンゴの監督としてクラブを南米王者に導き、クラブワールドカップ決勝ではリヴァプールと激闘を演じたという目指すべきモデルケースがあった。
だがRBブラガンチーノは、当時ポルトガル1部のリオ・アヴェの監督で、プレミアリーグでも指導経験のあるカルロス・カルヴァリャル(現ブラガ監督)との交渉に失敗。やはり、ヨーロッパ人監督に欧州でのキャリアを捨ててアメリカ大陸へ行くという決断をさせるのは相当ハードルが高いのだ。結局、時間がなかったこともあって国内からフェリペ・コンセイソンを据えることに落ち着いた。つまり、理想からは程遠い妥協案だったと言える。案の定、コンセイソンは成績不振で1シーズンも持たずにクラブを去った。
そして、さらに状況を難しくしているのが新型コロナウイルスである。
現在、COVID-19の累計感染者数が世界でワースト1位と3位のアメリカとブラジルで仕事をするのはリスキーと言えるだろう。実際、上述のジェズスは自身がコロナに感染し、家族にも感染する危険性を考えてフラメンゴを退団。古巣のベンフィカに戻っていった。
少し前進のNYレッドブルズ
そんなRBブラガンチーノに比べて、ニューヨークでは幾分か光明が見える。
NYレッドブルズも今シーズン成績が上向かずにクリス・アーマスを解任。後任にはイングランド・チャンピオンシップ(実質2部)のバーンズリーからゲルハルト・シュトルーバーを招聘した。
43歳のオーストリア人指揮官は、ザルツブルクのユースやセカンドチームであるリーフェリングの監督を歴任したレッドブル系監督で、昨季同じオーストリア・ブンデスリーガのヴォルフスベルガーの監督に就任すると、ELでボルシアMGを4-0で粉砕するサプライズを起こした。その後シーズン途中にバーンズリーに引き抜かれると、リーグ最下位に沈み降格の危機に瀕していたチームを最終節で逆転残留に導く手腕を発揮した。
念願のヨーロッパ流、そして「レッドブルスタイル」を知る指揮官を得て、これから上昇気流に乗っていくことが期待される。
昨季限りでラングニックという最も大きな存在が去ったレッドブル。RBグループを統括する役職は彼のために用意されたもので、その椅子は現在空位となっている。新たに「ラングニック後」という時代に入り、これから4クラブのフロントのあり方も大なり小なり変化があるかもしれない。
シュトルーバーは労働ビザの問題が解決され、もうすぐNYで指導出来るようです。