先日、CL決勝が終わったばかりだが、早くもベルギーやフランスでは新シーズンが開幕しており、主要リーグの幕開けもあっという間に始まる。
そこで、20/21シーズンを戦う主なレッドブル系監督をまとめてみた。世界各国に散らばる彼らの動向をチェックするのに役立てばと思う。
ドイツ
ユリアン・ナーゲルスマン(RBライプツィヒ)
まずはレッドブル・グループ総本山のRBライプツィヒ。
昨季から就任したナーゲルスマンは、ラングニック的なフットボールにポゼッションのエッセンスを注入。まだまだリーグ戦で勝ち切れないなど未完成な部分が散見されたが、クライマックスのCLでベスト4進出を達成。総本山でありながら、レッドブルの王道では無い道を進んでいるこのクラブが今季どのような進化を遂げるのか注目だ。
マルコ・ローゼ(ボルシアMG)
昨季ザルツブルクからステップアップを果たしたローゼは、1年目でCL出場権獲得という結果を残した。ザルツブルクでは中盤がダイヤモンドの4-3-1-2を採用していたが、ここでは質の高いサイドアタッカーを活かす4-2-3-1へシフト。
ライナーに加え、今季はヴォルフとラザロという新たな教え子も獲得して、さらなる飛躍を目指す。ザルツブルクユース監督時代からローゼを支える戦術ブロガー出身のレネ・マリッチとツィックラーの存在も忘れてはならない。
セバスティアン・ヘーネス(ホッフェンハイム)
あのバイエルン・ミュンヘンの元会長ウリ・ヘーネスの甥がブンデス1部に初挑戦する。
昨季はバイエルンのセカンドチームを率いて、ザークツィーなどの若手を育てながら3部優勝という成績を残し、それが評価されてステップアップに成功した。実はこの人、それ以前はRBライプツィヒの下部組織で監督を務めていたレッドブル系指導者。興味深い経歴を持つヘーネスが、1部でどういったフットボールを見せてくれるだろうか。
オリヴァー・グラスナー(ヴォルフスブルク)
ザルツブルクでロジャー・シュミットのアシスタンコーチとして指導者キャリアを始めたグラスナーは、リーフェリングとSVリートを経てLASKリンツの監督へ。そこで絶対王者ザルツブルクを脅かすほどにチームを成長させ、昨季ヴォルフスブルクの監督に就任した。
レッドブル系指導者では珍しい3-4-3を得意布陣としており、それに当てはめて序盤はリーグ戦無敗を続けていたが、中盤以降はやや失速。フォーメーションの変更も行った。今季はシーズンを走り抜けたい。
アディ・ヒュッター(フランクフルト)
南野がセレッソ大阪からザルツブルクに加入した時の監督がこのヒュッターだった。
しかし、その半年後にフロントとの衝突があって辞任。スイスのヤングボーイズを経てフランクフルトの監督に招聘され、初年度でELベスト4という大きな結果を残した。ザルツブルクでは4-2-2-2を基本としていたが、フランクフルトでは長谷部のリベロシステムが最も安定している感がある。ベテランの長谷部に頼りすぎない別オプションを昨季に続いて模索していくことになりそうだ。
アヒム・バイアーロルツァー(マインツ)
RBライプツィヒのU17、U19で監督を務め、ラングニックが率いた2部時代のトップチームではアシスタンコーチとしてサポートしていたバイアーロルツァーは、レーゲンスブルクの監督として独り立ち。その後、名門ケルンの指揮官に就任して1部昇格を勝ち取ったが、昇格後は成績が上向かず解任に。直後にマインツの監督に招聘されるという驚きのニュースを提供し、昨季は13位でフィニッシュした。
ハイデルSDの元、特にクロップとトゥヘルの時代には「良い時間」を過ごしたマインツサポーター。彼らを久しぶりに喜ばせるような成績を残したい。
ロベルト・クラウス(ニュルンベルク)
選手時代にもRBライプツィヒに在籍していたクラウスは、ユースのアシスタンコーチから指導者キャリアをスタートさせると、そこから順調にステップアップ。トップチームではラングニックとナーゲルスマンのアシスタンコーチとして働いた。そんな11年過ごしたライプツィヒを離れて、ついにトップチームの監督挑戦。昨季は入れ替え戦の末、ギリギリで2部に残留した古豪の復活というミッションに挑む。
イングランド
ラルフ・ハーゼンヒュットル(サウサンプトン)
RBライプツィヒがクラブ史上初の1部挑戦となったシーズンにハーゼンヒュットルは招聘された。インゴルシュタットをしっかり1部に残留させた手腕はライプツィヒの地でも発揮され、初年度でバイエルンに次ぐ2位フィニッシュ。
翌シーズンは成績を落とし、クラブを離れることになったが、セインツでもそのインテンシティの高いフットボールは健在。あのクロップが「サウサンプトンはプレッシングマシーンだ」と言うほど。昨季はレスターに0-9で敗れるなど苦しい時期も過ごした。今季はしっかりとスタートダッシュを決めたい。
ゲルハルト・シュトルーバー(バーンズリー)
昨季イングランド実質2部であるチャンピオンシップで最下位に沈んでいたバーンズリーは、ヴォルフスベルガーで印象的な戦いを見せていたシュトルーバーをシーズン中に引き抜いた。
ザルツブルクのアシスタントコーチや、リーフェリングで監督を務めていた経験のある彼は、最終節で自動昇格を争っていたブレントフォードを破って大逆転残留に成功。今季はRBライプツィヒやザルツブルクで指導者をしていた人材がコーチングスタッフに加わり、さらにレッドブル色が強まりそうな様相だ。
オーストリア
ジェシー・マーシュ(ザルツブルク)
ニューヨーク・レッドブルズで監督を務め、ラングニックのアシスタンコーチとして1年間RBライプツィヒで働いたアメリカ人指揮官は、昨季初めて欧州クラブの監督に挑戦した。
就任する前は、RBライプツィヒのお下がり指導者が来ることを良く思わなかったゴール裏のサポーターから批判的なバナーが出るほどだったが、爆発的な得点力で勝ちまくり、CLでもアンフィールドでの激闘など結果で黙らせた。
シーズン序盤は4-2-2-2を採用していながら、CLが始まると中盤をダイヤモンドにしたり、3バックにしたりと戦術的に柔軟なところも見せた。おそらく今季も結果を残せば、主要リーグへステップアップして行くことになるだろう。
ボー・スヴェンソン(リーフェリング)
ザルツブルクの優秀な育成を語る上で外せないのが、このセカンドチームであるリーフェリング。
マインツで長く指導者キャリアを築いてきたデンマーク人監督スベンソンが昨季就任すると、才能ある若手は躍動して2部リーグで3位フィニッシュ。アデイェミらはトップチームでも出番を与えられ、結果と育成を両立させた。UEFAユースリーグでもベスト4となり、ローゼのようにステップアップしていくことが期待される。
オランダ
ロジャー・シュミット(PSV)
ザルツブルク時代には強烈なパワーフットボールを披露して、最初にレッドブル・フットボールの存在を強くアピールしたのがこの人ではないだろうか。
レヴァークーゼン、北京国安の監督を経て今季ヨーロッパ復帰。レヴァークーゼン時代にタッグを組んでいたビデオアナリストのコルネトカもRBライプツィヒから呼び寄せて準備万全。日本人からすると、堂安がカンプルやベララビのようにブレイクしてくれることを願いたい。
トーマス・レッシュ(フィテッセ)
そのシュミットがザルツブルクの監督を務めていた時にアシスタンコーチとして働いていたのがレッシュ。
シュミットがよく採用する4-2-2-2ではなく、4-3-1-2や3-5-2をテストしている模様。チェルシーの若手選手がレンタル修行する場というイメージが強いフィテッセ。これからレッドブルの色が強まるのだろうか。
スイス
ペーター・ツァイドラー(ザンクト・ガレン)
ザルツブルクではヒュッターの後を継いで監督に就任するも、いきなりCLとELの予選で敗退するという大失態。リーグ戦でも低調な出来で半年も持たずに解任されてしまったツァイドラー。
しかし、スイスでは持ち直して、昨季は名門バーゼルを上回る2位という好成績を残した。今季はヤングボーイズ超えを目指す。
ベルギー
アレクサンダー・ブレッシン(オーステンデ)
2012年からRBライプツィヒの下部組織で働いていたブレッシンがついに成人チームを率いる夢を叶えた。
ベルギーリーグはすでに開幕しており、4試合戦って未勝利。苦しい時を乗り越えて成功を祈りたい。
アメリカ
クリス・アーマス(ニューヨーク・レッドブルズ)
マーシュがヨーロッパ挑戦したことで、アシスタントコーチだったアーマスが昇格したのが2シーズン前。
近年はウォルバーハンプトンのSDだったゼルウェルを引き抜いたり、イングランドから選手獲得をするなど欧州化、英国化が進んでいる印象だ。昨季はプレーオフ一回戦でショッキングな逆転負けによってシーズンが終わったNYレッドブルズ。今季はピッチ内でも十分な結果を出したい。
ジョン・ウォリーニーク(ニューヨーク・レッドブルズⅡ)
実質国内2部の位置付けとなるUSLチャンピオンシップに所属するNYレッドブルズⅡは、昇降格の無いリーグにおいて完全なセカンドチームとしての役割を果たしている。
先日、RBライプツィヒをCLベスト4に導くゴールを決めたアダムスもここでウォリーニークの指導を受けて成長した選手。彼に続くような選手を新たに輩出していきたい。
ブラジル
フェリペ・コンセイソン(レッドブル・ブラガンチーノ)
元々4部のレッドブル・ブラジルを保有していたレッドブルだったが、昇格までに時間がかかり過ぎることを考えて2019年に方針転換。2部のCAブラガンチーノを買収し、フロント、監督、選手らを移動させて現在のRBブラガンチーノとなった。
昨季2部優勝を果たし、目論見通り1部参戦の権利を得たのだが、監督のザーゴが電撃退任。突然新監督の招聘に迫られることになった。当初はポルトガル語圏ということで、ポルトガルリーグからの獲得を目指したものの、まとまらず。最終的にはコンセイソンを国内から引き抜いた。しかし、8月31日にクラブはコンセイソンを解任したと発表した。
日本
アントニオ・カルロス・ザーゴ(鹿島アントラーズ)
そのザーゴが行った先がJリーグの鹿島アントラーズである。
名門の改革を託されたわけだったが、いきなり公式戦6連敗。ただ、その後は荒木遼太郎など若手を積極起用しながら少しずつ持ち直してきている。
彼がレッドブル・ブラジル、RBブラガンチーノ時代にどのくらいラングニックらからレッドブル・フットボールのエッセンスを注入されていたのかは分からないが、いずれそれを感じられるような内容が見られるとJリーグも盛り上がりそうだ。
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