ショボスライ、ライマー(共に現RBライプツィヒ)、シュラーガー(現ヴォルフスブルク)、ライナー(現ボルシアMG)…。RBザルツブルクのユースがこれまで輩出してきたスターは数多くいる。
メルギム・ベリシャもRBザルツブルクユース出身だ。
昨季はオーストリア・ブンデスリーガで28試合14ゴール10アシストを記録。初のCLでも4ゴール2アシストと充実のシーズンを送った。
しかし、ベリシャはユースからすんなりとトップチームの主力となったわけではない。今回はそんなベリシャの山あり谷ありなキャリアを振り返っていきたい。
ユースで欧州王者に
ドイツのベルヒテスガーデン生まれでコソボにルーツを持つベリシャは、2008年にオーストリアへ移りRBザルツブルクのユースに加入する。
そこから順調に昇格していったベリシャにとって、ユース時代のハイライトとなったのは16/17シーズンのUEFAユースリーグだ。
「若手版CL」とも呼ばれるこの大会で、マルコ・ローゼ(現ドルトムント監督)に率いられたRBザルツブルクは、ハイダラ(現RBライプツィヒ)やハンネス・ヴォルフ(現ボルシアMG)らを擁して優勝。ベリシャも背番号10をつけてマンチェスター・シティ、PSG、アトレティコ・マドリード、バルセロナなどのユースを退けての欧州王者に貢献した。
このシーズンのベリシャは、セカンドチームのリーフェリングでも主力としてプレー。オーストリア2部で14ゴールを上げ、順風満帆なキャリアに見えた。
繰り返すローン生活
翌17/18シーズン、1部での経験を積むためにベリシャはLASKリンツへローン移籍となる。
元RBザルツブルクのアシスタントコーチであるオリヴァー・グラスナー(現フランクフルト監督)が指揮していたこともあって、すぐにポジションを確保。得点もコンスタントに取れて1部の強度にもフィットしていた。
だが、彼のキャリアに影を落とす出来事が。2月に足首靭帯の断裂という大怪我を負ってしまう。結局このまま復帰することなくシーズンを終えた。
18/19シーズン、ベリシャは再びローンに出される。今度はドイツ2部のマグデブルクだった。
ただ、前シーズンの負傷の影響が大きかったのか、チームのポジション争いに全く加われず。出場時間はわずか13分で、ローンは年内をもって打ち切られた。
年明けからは、オーストリアへ戻りアルタッハに貸し出される。すると半年間で7ゴールを獲り、復調気配でシーズンを締めた。
ハーランドと南野の移籍が転機に
19/20シーズンも、引き続きアルタッハでローン修行することになったベリシャ。
決して上位チームと言えない場所に身を置く中、ベリシャは気を吐き、年内で8ゴールを獲った。
ここで、ベリシャに大きな転機が訪れる。
クラブ史上初のCLでセンセーショナルなパフォーマンスを見せたRBザルツブルクから、冬のマーケットでハーランドと南野拓実が引き抜かれたのだ。
シーズン中の移籍により簡単に選手補強ができないこともあって、RBザルツブルクは彼らの穴埋めとしてベリシャのローンバックを決断する。ユースから過ごしたクラブへの念願の復帰を果たした。
しかしながら、苦難は終わらない。
ハーランドと南野が移籍したからといって、RBザルツブルクは才能の宝庫。レギュラーポジションにはファン・ヒチャン(現RBライプツィヒ)や、かつてユース時代には自分の控えだったパトソン・ダカ(現レスター)がいた。
ベリシャは少ないプレータイムでアピールに励むが、チャンスで決めきれないシーンが目立ち、結局1ゴール止まりに。不完全燃焼な復帰シーズンとなった。
ステップアップを目指す
その反面、ベリシャはチャンスシーンによく顔を出しており、ひとつ歯車が噛み合えば爆発する気配も漂わせていた。
それが昨季に形となったわけだ。
先に述べたように、ベリシャはリーグ戦でもCLでもゴールとアシストを量産。遠回りを経て、ついにRBザルツブルクのトップチームで居場所を手に入れた。
ベリシャの現行契約は今季限りまで。彼に延長の意思はないようで、今夏での移籍が噂されている。
難しい時間を過ごしたベリシャが、これからどのようなキャリアを歩んでいくのか見守りたい。
ベリシャは今季負傷で出遅れていて、その間にアデイェミやシェシュコのような若い世代がアピールしています。タイミング的には今夏移籍したいと本人は願っているかもしれません。